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生物と〈強調〉
Animals and "Emphasis"


このページに突然あらわれた「ゲゲゲの鬼太郎」の「目玉おやじ」、
あるいは、お寿司の「イクラ」のような生き物は、
その名もギガントキプリス-Gigantocypris agassizii。
大きな目玉をもつ、貝虫(深海生物)という意味です。
この生き物は、あることでギネス記録に認定されています。
それは「最も集光能力のある眼を持つ生物」です。
なんと、その集光能力は人間のおよそ8倍にも及びます。
文字通り〈眼球〉が遊泳しているかのような衝撃映像に、
わたしの〈眼球〉は釘付けにされました。
なぜ、このように「歪」-いびつ な生き物が存在できるのか、
どのように、この生き物が「視る」という行為に特化しているのか。それが気になって仕方ありませんでした。
そこで、わたしが建築を学ぶうえで身に付けた、
「図面化」によって、この生物から見出される
“強調”という概念を明らかにしていきます。
Gigantocypris agassizii
ギガントキプリスの〈強調〉

ギガントキプリスは、ウミホタル科の深海生物で、体長は3cmほど。深海1000メートル付近に生息します。

ギガントキプリスを三面図で分析してみます。

他のウミホタル(左)やキプリス幼生(右)と比較すると、「視る」ための器官(赤い部分)が異常に大きいことがわかります。
ギガントキプリスは、生存/絶滅 ギリギリのバランスで、 「視る」という行為をひたすら強調する
〈トレードオフ〉をおこないました。その結果、このような“風変わりな”かたちに収斂したとわかります。



トレードオフとは
〈トレードオフ〉とは、広く 「一得一失」と訳され、おもに生物学の分野では、環境や捕食者に対して、「何を失うかわりに何を得るか。」という駆け引きそのものを意味します。


近い
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「視る」行為と「視るための形」が非常に近い距離にあります。
形と行為の関係
"Form" and "Motion"

Membracidae / ツノゼミ (擬態)


Teleopsis dalmanni / シュモクバエ (誇示)
Eurypharynx pelecanoides Vaillant / フクロウナギ (捕食)

Uca arcuata / シオマネキのオス (求愛)

Uca arcuata / シオマネキのウェービング
シオマネキのオスは片腕が大きく、誇示としての役割をはたします。この腕を振るふるまいが、速ければ速いほど、メスに魅力をアピールできます。


近い
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「求愛」行為と「魅せるための形」が非常に近い距離にあります。
「建築は凍れる音楽である」
(シェリングもしくは、シュレーゲル兄弟)
「〈形〉は凍れる〈行為〉である」
自然界では、「形と行為の可逆性」がその多様性を担保していると言えないだろうか。

「何を〈強調〉したか」
What to "emphasize"
「何と〈協調〉したか」
What to "harmonize"
これらふたつの 強調/協調-キョウチョウ によって、生物を定義してみます。


How about humans?
生物は、とある行為を「強調」することで、「歪」になります。そして、それを補うために「協調」しているのではないでしょうか。
では、わたしたち人類は、「何を強調し」「何と協調し」ているのでしょうか。
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